環境に関する意識の高まり

再エネ電力の自立のステップ FIP制度とは

更新日:2023年12月2日

再生可能エネルギーの支援策であるFIT(写真はイメージです) 出典:iStock

再生可能エネルギーの支援策であるFIT(写真はイメージです) 出典:iStock

FIP制度をご存知でしょうか。2022年から始まった、再生可能エネルギーの普及支援のための政府の政策です。「再エネの支援政策といえばFITでは?」と思った方もいるかもしれません。どちらも再エネの支援政策ですが、何がどう違うのでしょうか。気になる再エネ賦課金についてもお伝えします。

この記事の著者
エネルギーのまち能代 編集部
皆様は「洋上風力発電」をご存知でしょうか。秋田県能代(のしろ)市では、日本で初めての「大規模商業運転」が2022年から始まっています。
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再エネ支援政策:FIP制度とは

再エネの普及と促進を支援する制度(写真はイメージです) 出典:iStock

再エネの普及と促進を支援する制度(写真はイメージです) 出典:iStock

FIP制度とは、Feed-in Premium(フィードインプレミアム)の頭文字をとったもの。再生可能エネルギーの普及支援のための政策の一つで、日本では20224月から開始されました。

再エネが進む欧州ではすでに取り入れられているFIP制度は、再生可能エネルギーの発電事業者に対して、電力の買取価格に一定のプレミアム単価(補助額)をプラスすることによって、事業への投資を促し再エネの普及と促進を目指す制度です。1kWhのあたりの電力単価が固定されているFIT制度(後述)と異なり、FIP制度では、市場価格に連動し、1kWhあたりの単価が変動単価となることが、大きな違いのひとつです。

 

FIP制度の前身、再エネ普及を後押ししたFIT制度

発電コストの高さから再生可能エネルギー事業の参入ハードルが高かった日本では、当時発生した東日本大震災での原発事故の衝撃もあり、日本のエネルギー方針は見直され、再生可能エネルギーでの発電量を増やす方向に転換されました。

2012年に導入されたFIT制度により、日本の再生可能エネルギー導入は促進され、国内の再生可能エネルギーでの発電比率は、水力発電を除いた数値で2.6%(2011年度)から10.3%(2019年度)と、急速に拡大してきました。

FIT制度は、再エネの導入を拡大することを目的に、再エネ設備から発電された電気(再エネ電気)をあらかじめ決められた価格で買い取るように電力会社に義務付けた制度です。発電事業者にとっては収入が事前に保証される状態となったのです。

 

FIP制度の前身、FIT制度の課題

しかし、FIT制度の導入により、様々な課題も出てきました。

その一つは、電気を利用する人が負担する「再エネ賦課金」です。市場競争から保護されていた再エネ電気は、FIT制度により普及が進み、再エネ賦課金の価格は年々上昇しています。経済産業省は、2021年度の再エネ賦課金の単価が3.36/kWhとなることを公表しました。自然エネルギー財団の試算では、月に250kWh以上の電気を消費する一般家庭では、負担総額は年間1万円を超えるとされ、家計を圧迫する要因となりえます。

賦課金単価の推移 出典:自然エネルギー財団

賦課金単価の推移 出典:自然エネルギー財団

また、FIT制度は、電気の需給や競争によって価格が決まる電力市場から切り離されており、再エネ発電事業者はいつ発電しても同じ金額で買い取ってもらえるため、需給バランスを意識する必要がありませんでした。しかし、今後再エネを主力電源としていくためには、再エネ以外の電源と同様に、電力市場の状況を踏まえた発電を行い、自立した電源としていかなければなりません。

そこで段階的な措置として、20206月に、他の非再エネ電気と同じく、電力市場と連動した発電を促す「FIP制度」の導入が決定しました。

再エネ賦課金

「再生可能エネルギー発電促進賦課金(はつでんそくしんふかきん)」が正式名称。

風力発電や太陽光発電など、再エネの買取に必要な費用をまかなうための賦課金です。

再エネ賦課金の単価は、毎年度、経済産業大臣が全国一律で決定しています。

再エネ賦課金は、電気を使うすべての人が電気利用料に比例して、電力会社が買い取った電気の価格の一部を、電気料金として私たちが負担しています。

私たちが支払う再エネ賦課金は電力会社を通して巡り、最終的には再生可能エネルギーで電気を作っている事業者に届きます。

私たちは知らない間に、再エネの促進に貢献しているのです。

FIP制度のしくみ

FIP制度の仕組み 出典:資源エネルギー庁

FIP制度の仕組み 出典:資源エネルギー庁

前身となるFIT制度では、電力会社が再エネ電気を買い取る際の1kWhあたりの単価(調達価格)が、電力市場の状況に関係なく、固定で定められていました。FIP制度でもこれと同じように「基準価格(FIP価格)」が定められます。再エネ電気が効率的に供給される場合に必要な見込額をベースとして、価格を決定します。

併せて、市場取引等で発電事業者が期待する収入である「参照価格」を設定します。参照価格は市場価格に連動するため、1か月単位で見直されます。

この、基準価格と参照価格の差をプレミアム価格(補助額)として、再エネ発電事業者はもらうことができます。再エネ発電事業者は、電気を売った価格にプレミアムが上乗せされた合計分を受け取ることになります。なお、プレミアム価格は、参照価格の変動に合わせ、1か月単位で更新されます。

参照価格はどうやって決まる?

市場と連動する参照価格は、主に電力取引が行われる「卸電力市場」「非化石価値取引市場」の市場価格から、バランシングコストを差し引き機械的に確定します。

※非化石価値 : 非化石電源で発電された電気が持つ環境価値の一種

FIP制度では、再エネ発電事業者が発電する再エネ電気の計画値を作り、実際の実績値と一致させることが求められます。これを「バランシング」といい、計画値と実績値の差(インバランス)が出た場合は、その差を埋めるための費用を支払わなければいけません。

これは、FIT制度では免除されていました。

このように、FIP制度では、再エネ以外の発電事業者と同様にバランシングをする必要があるため、インバランスコストを考慮し、その分をプレミアム価格の一部(バランシングコスト)として手当することになっています。

バランシングコストは、2022年度開始当初はkWhあたり1.0円を交付し、翌年度から徐々に金額を減らしていくこととなっています。

FIP制度とFIT制度のちがい

FIP制度とFIT制度のちがいは、買取価格の性質です。FITは電気の買取価格が一定ですが、FIPは変動します。詳しく見ていきましょう。

市場価格が高い時でも価格が固定するFIT制度

FIT制度は買取価格が一定となるため、電力の需要に関わらずいつ発電しても変わりません。そのため、市場価格が高くなる需要ピーク時に供給量を増やす価格調整(値段を上げる)ができません。一方で、市場価格が低い時にも価格が変わりません。たとえば、調達価格が32円の場合、市場価格が10円でも30円で売ることができます。

FIT制度における再エネ電気事業者の収入 出典:資源エネルギー庁より編集

FIT制度における再エネ電気事業者の収入 出典:資源エネルギー庁より編集

 

市場価格に応じて売上が期待できるFIP制度

FIP制度は、時間により参照価格が変動しますが、プレミアム価格(補助額)は一定です。市場価格が高いタイミングでも、プレミアム価格は一律で上乗せされるため、売価が基準価格を上回ってもその分を収入として受け取れます。そのため、電気の需要がある時間に電気を売れば、売電収入を増やすことが可能です。

FIP制度の場合は、市場価格に応じて、いつ、どこに売るかを自分で決める必要がありますので、その戦略により十分に利益を出すことが可能だと考えられています。

FIT制度における再エネ電気事業者の収入 出典:資源エネルギー庁より編集

FIT制度における再エネ電気事業者の収入 出典:資源エネルギー庁より編集

FIP制度で再エネの電力市場統合へ

再エネへの投資インセンティブを創出する(写真はイメージです) 出典:iStock

再エネへの投資インセンティブを創出する(写真はイメージです) 出典:iStock

FIP制度において、再エネ発電事業者はプレミアムを受け取ることにより、再エネに投資するインセンティブが得られます。また、電力の需給バランスに応じて価格が変動するため、蓄電池の活用や販売タイミングを工夫することにより、より収益を拡大できるメリットがあります。

今後、電力の需給バランスを意識した市場活動により、再エネが電力市場に統合されていくと考えられています。

今後もFIT制度とFIP制度の併存は続きますが、FIP制度は、再エネの自立化へのステップとして注目されています。再エネ発電事業者にとどまらない制度の利用で、新しいビジネスの創出やさらなる再エネ導入が期待されています。

 

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