【風力発電】地元資本で挑む陸上風力発電事業 ─ 中田建設と能代資源の共同プロジェクト
更新日:2026年11月5日
出典:iStock(写真はイメージです)
秋田県能代市は、日本海から吹き付ける安定した強い風という恵まれた自然環境を活かし、古くから風力発電の導入が進められてきました。近年では洋上風力発電が大きな注目を集めていますが、その基盤を築いてきたのは、地域に根差した「陸上風力発電」の取り組みです。
今回は、能代市を拠点とする「中田建設株式会社」と「株式会社能代資源」がタッグを組み、100%地元資本で立ち上げた新たな陸上風力発電事業「能代港風力発電株式会社」の挑戦と、それが地域にもたらす意義について詳しく解説します。
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- エネルギーのまち能代 編集部
- 皆様は「洋上風力発電」をご存知でしょうか。秋田県能代(のしろ)市では、日本で初めての「大規模商業運転」が2022年から始まっています。
このサイトでは風力発電の話題はもちろん、再生可能エネルギーや環境問題についても幅広く解説しています!洋上風力発電で未来をひらく、能代の「いま」をご覧ください。
もくじ
能代市の風力発電の歴史と陸上風力の重要性
能代市を含む秋田県の沿岸部は、風力発電にとって非常に理想的な環境が整っています。日本海から吹き付ける強い季節風と、海岸沿いに広がる平坦な地形は、風車の設置と効率的な発電に最適な条件を提供しています。この自然の恵みを活かし、能代市では2000年代以降、陸上風力発電の導入が積極的に進められてきました。
現在、能代港沖では大規模な洋上風力発電が稼働していますが、陸上風力発電はそれに劣らず重要な役割を担っています。陸上風力発電は、洋上風力に比べて建設コストが比較的低く、工期も短いため、地域主導での開発が行いやすいという特徴があります。また、既存の送電網への接続が比較的容易であることも大きな利点です。
地元企業タッグの誕生:「能代港風力発電」の設立
大規模な風力発電プロジェクトは、多額の資金と高度な技術を必要とするため、県外の大手資本が主導するケースが少なくありません。しかし、能代市では「地元の風資源は地元の手で活かし、地域に還元する」という機運が高まっています。
その象徴とも言えるのが、2022年1月に設立された「能代港風力発電株式会社」です。この会社は、秋田市に本社・能代市に本店を置く総合建設業の「中田建設株式会社」と、能代市扇田を拠点に再生可能エネルギー事業などを手掛ける「株式会社能代資源」の2社が共同出資して誕生しました [1] [2] 。
企業名 | 本社・本店所在地 | 主な事業内容 | 共同事業における役割 |
中田建設株式会社 | 秋田市(本社)、能代市(本店) | 土木・建築等の総合建設業 | 建設工事のノウハウ提供、土木・基礎工事の施工 |
株式会社能代資源 | 能代市扇田 | 再生可能エネルギー事業、リサイクル事業 | 再生可能エネルギー事業の知見提供、事業運営 |
長年能代のインフラ整備を担ってきた中田建設の「建設力」と、能代資源が持つ「再生可能エネルギー事業のノウハウ」を融合させることで、地域密着型の新しい風力発電事業がスタートしました。
大森山木材工業団地での風力発電プロジェクト
能代港風力発電株式会社が事業地として選んだのは、能代市大森山の木材工業団地等です。このエリアは、能代港に近く、安定した風況が見込める風力発電の適地です。
このプロジェクトでは、総額約10億円を投じて、最大出力1,990キロワットの大型風力発電設備(風車)1基を建設しました[1] [2]。2024年1月に無事稼働を開始し、能代の強い風を受けてクリーンな電力を生み出し続けています。
出力1,990キロワットという規模は、一般家庭数千世帯分の年間消費電力量を賄うことができる発電能力を持っています。1基の風車とはいえ、地域のエネルギー自給率向上に大きく貢献する重要な施設です。
地元金融機関との連携による資金調達
約10億円という大規模な建設資金を調達するにあたり、能代港風力発電は地元金融機関と強固な連携を図りました。
2024年1月、株式会社秋田銀行と日本政策金融公庫秋田支店は、この陸上風力発電事業に対して計9億円の協調融資を実施しました [1] [2]。内訳は秋田銀行が5億円、日本政策金融公庫が4億円となっています。
特に秋田銀行は、単なる資金の貸し手としてだけでなく、事業計画の策定や建設期間中の資金支援など、事業の準備段階から深く関与し、プロジェクトを伴走支援してきました [2]。地元企業が立ち上げた事業を、地元の金融機関が資金面・経営面で支えるという、地域経済循環の理想的なモデルがここに実現しています。
固定価格買取制度(FIT)を活用した安定した事業運営
能代港風力発電が生み出した電力は、国の「固定価格買取制度(FIT)」に基づいて売電されています。FIT制度とは、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定の価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度です。
このプロジェクトで発電された電力は、東北電力グループで送配電を手掛ける東北電力ネットワーク株式会社に売電されています [1]。FIT制度を活用することで、長期間にわたって安定した売電収入を見込むことができ、初期投資の確実な回収と、持続可能な事業運営が可能となります。
建設工事から運用まで:地元資本がもたらす地域への波及効果
能代港風力発電の事業が100%秋田県内資本、とりわけ能代の地元企業によって主導されていることの意義は非常に大きいと言えます。
県外資本が主導するプロジェクトの場合、建設工事の利益や売電による収益の多くが県外へと流出してしまう懸念があります。しかし、地元企業による共同事業であれば、以下のような波及効果が地域に直接もたらされます。
- 1 地元企業への工事発注:風車の基礎工事や周辺の造成、電気工事など、建設に関わる多くの工程を中田建設をはじめとする地元企業が担うことで、地域に直接的な経済効果が生まれます。
- 2 雇用の創出と維持:風力発電所は建設して終わりではなく、稼働後も20年以上にわたる長期的なメンテナンスが必要です。地元企業が事業主体となることで、メンテナンス業務も地元で内製化しやすくなり、新たな技術者の雇用創出に繋がります。
- 3 利益の地域還元:売電によって得られた利益が地元企業に蓄積され、それが次の事業投資や従業員の給与、地域への納税という形で、能代の経済を潤す循環を生み出します。
再生可能エネルギーで未来の能代を創る
中田建設と能代資源という、異なる強みを持つ地元企業が手を取り合って実現した「能代港風力発電」。このプロジェクトは、単にクリーンなエネルギーを生み出すだけでなく、「地元の資源を、地元の資本と技術で活かす」という、これからの地域創生のひとつの答えを示しています。
洋上風力発電という国家規模の巨大プロジェクトが進む一方で、その足元では、こうした地元企業による地道で力強い陸上風力発電の取り組みがしっかりと根を張っています。
私たちが日々使う電気が、地元の風から生まれ、地元の企業の手によって支えられている。その誇りを胸に、エネルギーのまち能代の挑戦はこれからも続いていきます。
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参考資料 [1] 秋田銀行と日本公庫、能代の陸上風力発電事業に協調融資 - 日本経済新聞
[2] 秋田県の風力発電に融資 秋田銀と日本政策金融公庫 - 環境ビジネスオンライン
