風力発電

洋上風力発電の環境アセスメントと課題

更新日:2023年10月30日

洋上風力発電の環境アセスメントと課題

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道路や河川、発電所などのインフラをはじめとした大規模開発による環境に大きな影響を与える可能性がある事業は、その影響を事前に調査する「環境アセスメント」が義務付けられています。日本の洋上風力は始まったばかりで、その最適なあり方は現在検討が進められています。この記事では、着床式を主眼に置いた洋上風力発電事業における環境アセスメントのポイントについてお伝えします。

この記事の著者
エネルギーのまち能代 編集部
皆様は「洋上風力発電」をご存知でしょうか。秋田県能代(のしろ)市では、日本で初めての「大規模商業運転」が2022年から始まっています。
このサイトでは風力発電の話題はもちろん、再生可能エネルギーや環境問題についても幅広く解説しています!洋上風力発電で未来をひらく、能代の「いま」をご覧ください。

洋上風力発電の環境アセスメント

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環境アセスメントでは、調査対象となる区域の特性に合わせ、評価項目が定められます。洋上風力発電における調査対象区域の地域特性に応じて、騒音や、水の濁り、生物、水中音、海藻草類、景観等の評価項目を選定します。
以下のグラフは着床式の洋上風力発電における環境アセスメントで対象となった主な項目です。

 

評価項目として選定された項目の例

出典:環境省 令和4年度洋上風力発電の環境評価制度の諸課題に関する検討会取りまとめ出典:環境省 令和4年度洋上風力発電の環境評価制度の諸課題に関する検討会取りまとめ

 

この中でも、環境大臣意見で特に懸念が指摘されているのは、騒音、鳥類、海生生物、景観の4項目でした。

洋上風力発電環境アセスメントの課題

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環境省『環境影響評価情報支援ネットワーク』が公表する洋上風力発電の環境アセスメント事例数は、106件(全手続き段階)ありますが、陸上風力発電の453件と比較した場合、実施例が少ないのが現状です。
また、洋上における現地調査は、天候による影響や、風車にアクセスできる船舶が限られるなど制約も多いため、環境への影響を予測する手法に関する知見が十分ではありません。ノウハウを蓄積しながらのアセスメントとなるため、環境影響予測の不確実性が高くなります。

洋上風力発電の調査アセスは、事業者選定前の初期段階のアセスメント手続と、事業者選定後のアセスメント手続の、2段階で構成されています。また、事業者選定前の調査では複数の事業者が同じ区域で環境アセスを実施するため、操業調整等による地元漁業者の反感を買い、案件形成の逆効果になることもあります。
調査の重複や長期化によるコスト増やステークホルダーとなる地域の混乱に伴う合意形成の難航などが、事業推進の妨げになることが懸念されます。

上記の理由から、「環境影響予測の不確実性の課題」と、「効率性の課題」の、大きく2つの課題があると言えます。

 

再エネ海域利用法とアセスメント法
事業者は、独立した2つの法律に対応する環境アセスが必要です。促進区域に指定されるための再エネ海域利用法と、甚大な公害や自然破壊を防止することが目的である環境影響評価法(アセス法)が定める要件についてどちらも調査しなければなりません。それぞれのアセスメント項目には重複があり、非効率な調査が発生します。

洋上環境アセス課題への対策

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それぞれの課題に向けて、政府も対策を講じています。

 

環境アセスメントの影響予測の不確実性の課題

現地調査が制限され、事例も十分でない洋上の環境アセスに「絶対」はありません。現在は、海外の事例のほか、各国の国家実行や科学的知見を幅広く収集して、その座組を構成しています。
環境省が公表する「令和4年度 洋上風力発電の環境影響評価制度の諸課題に関する検討会 」では、事業者の事業実施や事業継続に係る予見可能性を確保しつつ、洋上風力発電の環境影響の予測の不確実性が高いことを前提とした仕組みを考えることが重要だとしています。

 

<事例>水中音に関する調査事例(ドイツ)
ドイツでは、ウィンドファーム内(複数の風車設備を同地域に集合させた風力発電所)に生息するニシンやイワシ類等を対象とした、軽量魚探調査を実施しました。調査は、着床式風力発電の着工前(2009年春)、工事中(2009年夏~秋)、運開後(2010年春以降)の3段階に分けて行われました。

ウィンドファーム外の現存量を1としたところ、工事期間中はウィンドファーム外の40-50%まで低下しましたが、運開後に元の水準に戻った、という事例です。

グラフは、青ラインが昼間、赤ラインが夜間の現存数を表します。

 

出典:公益財団法人 海洋生物環境研究所出典:公益財団法人 海洋生物環境研究所

 

環境アセスメントの効率性の課題への解決

初期段階の環境アセスメントを政府が代行する「セントラル方式」の導入が進められています。
セントラル方式は、案件形成に向けた風況・海底地盤等のサイト調査、系統接続の確保や環境アセスメント、実施区域の指定や発電事業者の公募、地域調整や漁業実態調査などを行い、政府や地方公共団体が主導して洋上風力発電の円滑な導入をすすめる方法です。

初期段階の調査から事業者公募までがセントラルキッチン(=政府)で行われることにより、地元事業者の操業を阻害する調査の乱立を防ぎ、調査の総コスト抑制につながります。
事業者の負担も軽減され、効率化が図れるとされています。

洋上風力発電の環境アセスメントのまとめ

日本の洋上風力発電は実例が少なく、環境アセスメントの知見も十分なものではありません。環境への予測も難しいことから、現段階では事業開始後も定期的な環境調査が必須となります。

まずは各地で実施される洋上風力発電事業で、環境への影響に関する客観的なデータを集め、問題が発生した場合に順応的対応を行なうという段階だと言えます。
洋上風力発電が盛んな欧州での取り組みを参考にして、環境だけでなく、産業面でも地域共生を行っていくことが望まれます。

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