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能代市の洋上風力発電(1) 「ワンストップサポート」と「地元ならではの情報提供」という意識が事業者と地元の協力体制に繋がる

更新日:2024年11月30日

能代市の洋上風力発電(1) 「ワンストップサポート」と「地元ならではの情報提供」という意識が事業者と地元の協力体制に繋がる

能代市役所の市長応接室に飾られたシルクスクリーン(地元企業が製造)
出典:編集部にて撮影

 

洋上風力発電事業の立ち上げには、事業者の努力だけではなく、地元の方々の理解や協力が不可欠です。円滑な事業推進を目指した自治体として、どのように取り組むのか。能代港における洋上風力発電事業に計画段階から関わってきたエネルギー産業政策課に話を聞きました。

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この記事の著者
エネルギーのまち能代 編集部
皆様は「洋上風力発電」をご存知でしょうか。秋田県能代(のしろ)市では、日本で初めての「大規模商業運転」が2022年から始まっています。
このサイトでは風力発電の話題はもちろん、再生可能エネルギーや環境問題についても幅広く解説しています!洋上風力発電で未来をひらく、能代の「いま」をご覧ください。

運転開始まで8年以上要した、能代港の洋上風力発電事業

能代港の洋上風力発電 出典:編集部にて撮影

能代港の洋上風力発電
出典:編集部にて撮影

 

2022年12月から運転が開始された能代港洋上風力発電事業は、事業開始から8年以上前の2014年にプロジェクトが始動しました。

能代港の港湾管理者である秋田県が計画を主導することとなりましたが、はじめは能代港で風力発電をすることが可能かどうか、というところから議論が始まりました。

能代港は古くから秋田杉等の集積地として栄えた港でした。その後、東北電力株式会社の能代火力発電所の立地が契機となり、昭和56年に重要湾港に指定され、エネルギー港湾として防波堤や航路泊地の整備が進み、現在も荷役業者や漁業者の船が多く往来している場所です。

洋上風力発電がどのような形でこの港湾区域内に導入されていくのか、市では勉強会の開催や、市の広報誌「広報のしろ」での周知など、先行利用者への説明や情報発信の場を設けてきました。

また、県主導のもとで能代港を利用する船舶の航行を阻害しない場所への風車の配置プランの検討や漁業関係者をはじめとする先行利用者との議論を重ね、港湾区域内での洋上風力発電事業の実施について合意を得ていきました。

このように関係者との調整や、環境影響評価等のプロセスを着実に進めていったことで、8年後、満を持して事業が開始されることとなりました。

 

意識したのは「ワンストップサポート」と「地元ならではの情報の提供」

能代市役所の風景
出典:編集部にて撮影

 

その後、秋田県では、県内の再生可能エネルギーの導入拡大と産業振興を目的とし、秋田港と能代港における洋上風力発電事業者の公募を行いました。20152月、丸紅株式会社が事業者として選定され、20164月に丸紅を中心としたSPCである秋田洋上風力発電株式会社(AOW)が設立されました。

事業者が選定されただけでは、洋上風力発電事業は実施できません。事業は海の上だけで完結するのではなく、作った電気を陸に上げ、陸上変電所に運ぶ必要があります。その際のルート上には、市の土地や道路、私有地などがあり、それぞれの管轄や所有者との調整が必要になります。
エネルギー産業政策課では、様々な手続きが円滑に進むような各所との調整等の橋渡し役として、事業者へのバックアップを行い、ここで相談すると、他の部署への段取りまでをサポートしてくれる、「ワンストップサービスの提供」を強く意識されていたそうです。

『地元ならではの情報提供』ができるのが自治体の強み」だと、エネルギー産業政策課の職員は言います。
事業者からの相談ごとは多岐にわたり、それぞれにキーパーソンが必ずいるので、地元の人脈や日頃の交流を活かして、自治会の紹介や、誰に話をすればよいかのアドバイスをしてきました。

洋上風力発電事業の場合、専門性の高さや規模の大きさから、地元の会社ではない企業が選定されることもあり、その場合は地域住民が『よく知らない会社』が市外から町にやってくることになります。新たな事業を進めていくには、地元の理解を得ることが肝要です。そのためのプロセスとして、地元のキーパーソンとの会話は欠かせません。

地元ならではの情報提供や、ワンストップサポートを提供するのが洋上風力発電事業を推進していく、自治体の役割の一つだと言えるでしょう。

 

先行利用者との調整は「能代港航行安全連絡協議会」で

漁港の様子 出典:能代市浅内漁業協同組合より提供

漁港の様子
出典:能代市浅内漁業協同組合より提供

 

漁業者や荷役業者との協議は、「能代港航行安全連絡協議会」という会議体の中で行っています。有識者からの意見を参考にしながら、漁業者などの先行利用者と自治体、監督官庁で会議を重ね、風車の配置などの決定事を話し合います。
この会議体には発電事業者も参加しており、関係者全員で合意形成を図っています。

 

地元の方々の不安の払しょくには、細やかな情報提供を

市の広報誌等を通じて地域住民に分かりやすく情報発信
出典:広報のしろ

 

公募を開始するまでに、直接のステークホルダーとなりうる先行利用者の方々には、説明と話し合いを行ってきました。一方で、市民への事業の理解促進を目的として、洋上風力発電事業に関する情報も発信しました。
事業推進プロセスの中で、事業者側で事業計画の説明会は実施しますが、足を運ぶ方はそう多くありません。そのため、市の広報誌を通じて、全市民に向けて情報提供を行ってきました。

伝えるための工夫として、市の担当者はこのように説明してくれました。
「海の上に風力発電所の風車が建つという事を、文字や言葉だけで説明しても、風力発電を知らない方々にはイメージしづらいと思います。図やモンタージュなどを活用して、視覚的に伝える工夫をしてきました。『細かな部分は異なる可能性はありますが、概ねこんな感じになりそうです』という概要を伝えつつ、地域の方々にも洋上風力発電事業のイメージが沸くように心がけてきました。」

 

事業者の地域貢献で洋上風力発電への理解と受容も深まる

作業船の船内見学イベント
出典:グローバルウインドデイin能代

 

2023年418日、能代市の子どもたちが、「将来なりたい自分」をテーマに書いた手紙などを入れたタイムカプセルが能代港洋上風力発電所の風車設備の中に設置されました。能代の子どもたちに洋上風力発電を身近に感じてもらうとともに、地球環境についても考えてもらいたいと、事業者から提案を受けた企画です。このイベントは、事業者から相談を受けてから、教育委員会をはじめとする関係部署と調整をし、各学校の理解を受けて実現したもので、ここでも、ワンストップサポートという意識が活きています。

また、能代市では毎年6月に市内の風力発電事業と連携のもと「グローバルウィンドデイ」という風車にちなんだイベントを開催していますが、2023年からはAOW社もメンバーとして加入し、風車タワー内の見学に加え、作業船の船内見学なども行えるようになっています。
子どもたちやその保護者が参加し、洋上風力発電を生活の中で身近に感じてもらう機会を、イベント等を通じて市としてバックアップしていきたい想いが、取材を通じて伝わってきました。

 

今後の一般海域における洋上風力発電事業に向けて

能代市・三種町・男鹿市沖 出典:ウィンドジャーナル

能代市・三種町・男鹿市沖
出典:ウィンドジャーナル

 

今後、一般海域において導入が見込まれる風車はブレードの直径が200mを超える大型設備であり、事業もさらに大規模化していくため、引き続き、地域の方々に対する丁寧な説明と周知広報が求められます。

「すでに風車が回っている港湾区域の風景と重ねながら、一般海域における風車の配置や大きさやモンタージュで、その輪郭がよりはっきりとイメージできるような伝え方を考えていきたいです。」

今後の運転開始を見据え、市の担当者は地域への思いを巡らせていました。






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