インタビュー

洋上風力発電との共生で漁業を再生する

更新日:2023年11月30日

洋上風力発電との共生で漁業を再生する

出典:編集部にて撮影(大髙組合長)

 

能代で漁業を営む漁師のみなさんにとって、洋上風力発電は漁場や潮流の変化につながる懸念があることから、心配の声が上がっても不思議ではありません。
しかし、能代の浅内漁業協同組合は、洋上風力発電に協力の姿勢を表明し、同時に漁業の活路をも見出して行こうとする道を選びました。代表理事組合長の大髙さんに、その想いと未来への夢を語っていただきました。

この記事でお話を聞いた方
能代市浅内漁業協同組合 代表理事組合長 大髙 光晴さん
27歳の頃に趣味で始めた無線がきっかけで通信業界の道へ進む。
現在は、携帯電話のキャリア事業やOA機器のリース事業、焼き肉店等の多角経営を行う傍ら、漁業協同組合の代表として地域の漁業関係者をまとめながら、地域漁業の安定や若い世代の所得向上を目指した活動を行っている。
好きな魚はマグロで、理由は「大きな夢がある魚だから」。座右の銘は「実れば実るほど頭を垂れる稲穂かな」。
この記事の著者
エネルギーのまち能代 編集部
皆様は「洋上風力発電」をご存知でしょうか。秋田県能代(のしろ)市では、日本で初めての「大規模商業運転」が2022年から始まっています。
このサイトでは風力発電の話題はもちろん、再生可能エネルギーや環境問題についても幅広く解説しています!洋上風力発電で未来をひらく、能代の「いま」をご覧ください。

漁協が抱えている問題点について

ハタハタ水揚げの様子 出典:秋田県水産漁港課

ハタハタ水揚げの様子 出典:秋田県水産漁港課

 

───はじめに、浅内漁協が抱えている現状の問題点や課題についてお聞かせください。



「まず、漁獲量の減少です。これは、洋上風力発電が原因かどうかはわかりませんが、年々漁獲量が少なくなっています。ヒラメやタイなどの稚魚を毎年5,000匹ほど放流するのですが、育たない、漁場に定着しないので困っています。以前は放流すれば増えたのですが、いまはどこに行ってしまったのでしょう」

「また、漁業従事者の高齢化が加速しています。一方で後継者問題もあります。儲からないと若者は来てくれません。漁業継続に対する不安が大きいというところです」

 

浅内漁協、「あきたマリタイムサービス」への出資決断の思い

出典:編集部にて撮影(陸地から洋上風力発電を望む)

出典:編集部にて撮影(陸地から洋上風力発電を望む)

 

───2023年4月に、洋上風力発電設備のメンテナンス業務への参入を目指す会社「あきたマリタイムサービス」が設立され、浅内漁協も出資参画されたと伺っています。漁業を取り巻く環境が厳しい中、どのような議論を経て洋上風力発電との共生の道を選ばれたのでしょうか。



「洋上風力発電のメンテナンス業務が円滑にできるよう、我々漁業者の海に関する豊富な知識と経験を活かし、力を貸してほしいというお話をいただきました。漁業だけでは生活が厳しいという現実はあるものの、一方で、我々はどうやって社会に貢献できるのかという自らへの問いかけを続けるなかで、最終的には協力していくのが良いのではないかと結論を出しました」

「実際のメンテナンスは出来ませんが、操船技術は持っていますので、協力出来ることは沢山あるのではないかと思っています。潮の流れが毎日のように変化する能代の海を熟知している、我々の経験や知識は大いに役立つと思います。風車のタワーにぶつかると船は壊れますし、生命に関わることですから。そこは漁師にお任せいただければと思っています」

 

───出資話が持ち上がったとき、漁協内には反対意見もあったのではないですか。



「はっきり申し上げて、年配者と若い世代の意見の違いはありました。年配者からは反対する意見もありましたが、若い人は比較的考え方がクールで、生活のため、貢献することになるのなら良いのではないかと意見が分かれましたね。結論としては、これからを背負う若い世代の生活が少しでも安定することに役立つのであれば、洋上風力発電事業者とメンテナンス会社と我々とで協力し合って、良いものにしていこうと意見をまとめていきました」

 

───能代の未来や若い世代のことを考えて、参加することで共生の道を考えていこうという結論なんですね。



「はい。再生可能エネルギーの大切さは、十分に理解しておりますので。ただし、生活のためでもありますので、しっかりと事業者と共存共栄の話をしていく必要は感じています」

 

漁業従事者として洋上風力発電に対する不安と期待

秋田の県魚「ハタハタ」の遊泳 出典:秋田県水産振興センター

秋田の県魚「ハタハタ」の遊泳 出典:秋田県水産振興センター

 

───2022年12月から大型の洋上風力発電が開始されましたが、率直にどのような感想をお持ちですか。



「日本ではこれまで経験のない大型の商用洋上風力発電が、この能代で回り始めました。本当のところ、我々の海がどうなるんだろうとすべてが不安な心境です。漁獲に関する不安はもちろん、魚の種類が変わると網や漁具が変わる、漁法も変わってきます。そうなると知識もないので、それを一から始めるのは難しく、費用の心配もあります。風車のタワーにより潮の流れが変わると砂が浅場に溜まってきますし、その影響もすごく懸念されます」

 

───欧州では風車の基礎部分に魚礁ができたという事例を聞きますが。



「五島列島の洋上風力発電の現場でも同じような事例があるようですね。私も今回の話が来たとき、いち早く五島列島に視察に行きました。水中カメラで撮るとすごいですよ。海藻に寄ってくる魚が本当に沢山映っていました。だから、海藻がつくまでの2〜3年は、魚がいなくなるかもしれませんが、我慢も必要だと思っています」

 

事業者と話し合い、漁業共存の道を描く

風力発電と漁業の共存を模索 出典:秋田県水産漁港課

風力発電と漁業の共存を模索 出典:秋田県水産漁港課

 

───能代の海の状況は、どうなるとお考えですか。



「おそらく回遊魚は回ってくるので大丈夫だと思いますが、根魚は難しいかもしれません。戻ってくるのに2〜3年は必要ではないかと予測しています」

「産卵や成長には海藻が必要なんです。能代には火力発電所がありますが、発電所の海沿いにたくさんのテトラポッドが設置されました。結構な海藻がついて、おそらく10数年間は魚がたくさん捕れました。それがいまはほとんど磯焼けして海藻がつかなくなり、アワビもサザエも、魚もいなくなりました。魚には海藻が大事なんです」

 

───事業者側との話し合いは始まっていますか。



「それは、これからです。今後、どのような環境改善をしていくかなどについて、我々からも要望を出し、話し合いが始まると思います。ようやくスタートラインについたところです」

 

───今後、一般海域での洋上風力発電事業が予定されていますが、何か心配なことはありますか。



「漁師にとっては漁場というのは仕事場です。ひとつの例えですが、自分の庭に電柱がいっぱい立つような感覚を想像してもらえば分かりやすいかと。どんな印象を持たれますか。その中で仕事をするんです。200mや400mの間隔は、海の上では、かなり接近している距離になります。空を見上げていると、もう次の風車が目の前に迫っている。はっきり言って、恐ろしい感じです。油断していると事故が起こるのではないかと心配になります。あとは、工事の音ですね。経験したことのないすごい音でした。魚は振動に敏感なので、工事の音から発生する振動を感じて、いつもの海じゃないと思ったかもしれません。だから、しばらくは我慢です」

 

洋上風力発電所の建設が計画される海と共存する漁協のモデルケースに

出典:編集部にて撮影(大髙組合長)

出典:編集部にて撮影(大髙組合長)

 

───今後、洋上風力発電が全国各地で計画されていく中で、同じ不安を抱える漁業組合の方が数多くあると思いますが、浅内漁協は注目を集めているのではないでしょうか。



「取材の申込みがいくつもあります。皆さん、すごく関心を持たれていますね。我々も、五島列島まで行って現場を見るまでは全く分からなかったように、洋上風力発電が計画される地域の漁業組合であれば同じような心配事が多々あると思いますので、我々も協力していこうと思っています。なにしろ、能代が洋上風力発電の発祥地ですので、参考になる情報がたくさんあると思います」

 

───洋上風力発電が漁業を再生するエネルギーになるといいですね。



「そうですね。少しでも能代の活性化、漁業の活性化につながってもらえれば、我々も貢献できたことに喜びを感じます。楽しい海にしたいですよ」

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