環境に関する意識の高まり

CO2排出がゼロなら、カーボンニュートラルで良いの?

更新日:2023年10月30日

CO2排出がゼロなら、カーボンニュートラルで良いの?

出典:iStock

 

最近耳にすることが多くなった「カーボンニュートラル」。カーボンニュートラルとは温室効果ガスの排出量を「実質ゼロ」にすることです。でも「排出量をゼロにする」ではないのでしょうか。世界中がカーボンニュートラルに取り組むようになった経緯も含めてご説明します。

この記事の著者
エネルギーのまち能代 編集部
皆様は「洋上風力発電」をご存知でしょうか。秋田県能代(のしろ)市では、日本で初めての「大規模商業運転」が2022年から始まっています。
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カーボンニュートラルは”実質0”

カーボンニュートラルは温室効果ガスであるCO2の排出を抑える取り組み 出典:iStock

カーボンニュートラルは温室効果ガスであるCO2の排出を抑える取り組み 出典:iStock

 

カーボンニュートラルとは、端的にいえば温室効果ガスの排出量と吸収量を全体としてゼロにすることを意味しています。
なぜ、「排出量ゼロ」ではなく、「実質ゼロ」とされているのでしょうか。
その理由は、人間が地球上で生産・消費などの経済活動をする上で、温室効果ガスの発生を「完全にゼロ」にすることには困難性があるからです。

やむを得ず大気中に排出してしまった温室効果ガスに関しては、様々な方法で回収・吸収を行うことで、差し引きゼロとする。このような温室効果ガスの排出を「全体としてゼロにする」という考え方を「カーボンニュートラル」と呼んでいます。

カーボンニュートラルの経緯

CO2の排出を実質ゼロにする 出典:iStockCO2の排出を実質ゼロにする 出典:iStock 

 

2023年5月、国連世界気象機関(WMO)のターラス事務局長はレポートの発表に際し、「今後地球の気温は未知の領域に入る」と危機感をあらわにしました。この異常気象は温室効果ガスによる地球温暖化により引き起こされ、実際に日本でも過去100年あたりの割合でみると平均気温は1.3℃上昇しています。(気象庁 日本の年平均気温より参照)
平均気温1℃上昇するだけでも、環境に多大な影響をもたらします。

例えば世界各地での発生が顕著となった豪雨等による気象災害。秋田県能代市でも大雨による浸水等の被害がありました。他にも、農作物がうまく育たなくなる生育障害・水産資源の減少などがあり、これらの問題は地球温暖化が原因である可能性が高いと指摘されています。

温室効果ガスにより進む地球温暖化に歯止めをかけるため、2015年、世界の約200か国が合意して「パリ協定」という国際的な協定が結ばれました。

この協定は地球温暖化を防ぐために決められた枠組みで、世界の平均気温を1760〜1840年の産業革命前と比較して、2℃未満、理想としては1.5℃に抑える努力をすることを目的としています。
引用元:環境省 パリ協定を踏まえた我が国の気候変動への取組

気候変動の政府間パネル(IPPC)によれば、産業革命前と比較した世界の平均気温は、すでに約1度上昇しています。現在も地球の気温は上がり続けていて、このままでは気温上昇の抑制目標である1.5℃を一時的に超える可能性も出てきました。
人類が今後も生活環境を維持しながら発展していくためには、温室効果ガスの削減が避けられない課題となったのです。

日本のカーボンニュートラル

脱酸素社会が訪れる 出典:iStock脱酸素社会が訪れる 出典:iStock 

 

日本では、国際公約として掲げた2050年のカーボンニュートラル達成に向け、2030年度中間目標として二酸化炭素の排出量削減46%(2013年比)を定めています。

次の図は、部門別のCO2排出量を表しています。
このうち、電気・熱配分前排出量でみると、「産業部門(24.3%)」と「エネルギー転換部門(40.4%)」が日本の二酸化炭素排出量の中で多いことがわかります。

 

出典:環境省 2020年度温室効果ガス排出量(確報値)概要出典:環境省 2020年度温室効果ガス排出量(確報値)概要

 

そのため、産業部門において事業活動の更なる省エネに取り組むこと、化石燃料での発電から再生可能エネルギー発電に日本の電源構成を切り替えていくこと、この2点に重きを置くことで、温室効果ガスの削減を行おうとしています。

CCUSでカーボンニュートラル

植物は光合成でCO2を回収 出典:iStock植物は光合成でCO2を回収 出典:iStock 

 

排出してしまったCO2は、もう回収することはできないのでしょうか。一般的なCO2の回収方法は、植物や海藻による光合成での吸収が良く知られていますが、地中に埋めてしまうという方法もあります。

CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)・CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)と呼ばれる方法がそれにあたります。CCSは、「二酸化炭素回収・貯留」技術とも呼ばれています。CO2を回収して貯留するだけでなく利用するための技術をCCUSといいます。 CCS・CCUSはまだ始まったばかりの技術ですが、2050年カーボンニュートラルの実現にむけて、さまざまな手段で温室効果ガス削減が進んでいます。

秋田県能代市のカーボンニュートラル施策

CCSの概念図 出展:環境省:「我が国におけるCCS事業について」

CCSの概念図 出展:環境省:「我が国におけるCCS事業について

 

CO2の回収・貯蔵には液化CO2船舶輸送の方法が検討されていますが、大型船が停泊できる港湾が必要だと言われています。秋田県能代市では、船舶により輸送されるCO2を受入可能な港湾があり、港湾周辺にはカーボンリサイクル産業の集積可能な用地が存在しています。
また、経済産業省が2019年に行った調査では、CCSの大規模貯留適地として、「秋田―庄内沖海域」の能代沖等が、最も高い総合評価を受けました。
今、能代市ではCCS・CCUS事業の誘致を推進し、港湾機能を活用した新たな産業振興と地域の脱炭素化を目指しています。

カーボンニュートラルの定義まとめ

カーボンニュートラルな未来を目指す 出典:iStockカーボンニュートラルな未来を目指す 出典:iStock

 

今回の記事では、カーボンニュートラルという考え方や、実現のための技術をご紹介しました。

 

カーボンニュートラルとは、排出した温室効果ガスを吸収することで「全体として排出量をゼロ」にする考え方。

 

2030年度までに「二酸化炭素の排出量を46%削減する(2013年比)」目標をどこまで達成することができるか。2050年のカーボンニュートラルの達成に向けた日本の取り組みは、世界から注視されています。

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