風力発電

風力発電所の風車が停止している理由は?!

更新日:2023年10月30日

風力発電所の風車のハブ部分の点検(イメージ)出典:iStock

風力発電所の風車のハブ部分の点検(イメージ)出典:iStock

 

風力発電所では、同じエリア内にあるのに、風車によって回っていたり、回っていないことがあります。回っていない風車は、あえて風車を停止しているのかもしれません。風車が止まっている理由についてご紹介します。

 

この記事の著者
エネルギーのまち能代 編集部
皆様は「洋上風力発電」をご存知でしょうか。秋田県能代(のしろ)市では、日本で初めての「大規模商業運転」が2022年から始まっています。
このサイトでは風力発電の話題はもちろん、再生可能エネルギーや環境問題についても幅広く解説しています!洋上風力発電で未来をひらく、能代の「いま」をご覧ください。

風力発電所の風車の停止理由1:メンテナンスによる停止

風力発電所のブレードの補修作業(イメージ)出典:iStock風力発電所のブレードの補修作業(イメージ)出典:iStock

 

同じ場所にあるのに、ブレードが回っている風車と回っていない風車。風が吹いているのに、運転を停止している場合は、メンテナンスを行っているのかも知れません。風車には定期的なメンテナンス作業が必要で、安全のためにブレードの回転を止めて作業を行うことがあります。

風力発電事業者には、単基500kWを超える風力発電設備については、経済産業省が定めた、電気事業法に基づく「定期安全管理審査制度」により、3年ごとの定期点検が義務付けられています。現在、日本の風車の約9割は500kWを超えており、定期点検の対象となっています。

風力発電所の風車の停止理由2:故障防止のための停止

強い風が吹く場所(イメージ)出典:iStock強い風が吹く場所(イメージ)出典:iStock

 

風力発電を稼働するには、「風が強いほど良い」わけではなく、「一定の風が安定して吹く」状況が一番発電に適しています。そのため、風が強くなりすぎると、風車の制御機構でブレードを風に対して平行にして、風を受けないようにして風圧を弱め(フェザリング)、強風による回転を抑制します。これが行われる風速を「カットアウト風速」といいます。

あまりに風が強い状況で発電を続けると振動が発生したり、発電のしすぎや、ブレード等に負担がかかることで風車自体が故障する可能性があるからです。

風力発電所の風車の豆知識!カットイン風速・カットアウト風速

風車が発電を開始できる風速をカットイン風速といいます。それ以下の風速では風車は発電ができません。風車の機種によって微妙な差がありますが、概ね風速3m/sから風車は発電を開始できます。

逆に風車の回転速度が上がり過ぎて、風車を停止させる必要がある風速をカットアウト風速といいます。25m/s以上の風が吹くと自動的に風車が止まるか、強度上安全な回転数まで低減させる仕組みになっています。

もともと大規模風力発電で使用されるプロペラ型の風車は、同方向から吹く風に効率が良いように作られており、台風のように風向きが短時間で変わるような場合には向いていません。そのため台風など強風が予想される場合は、予め風車を停止しておく場合もあります。

風力発電所の風車停止による発電コストへの影響

利用率とコストのバランス(イメージ)出典:iStock利用率とコストのバランス(イメージ)出典:iStock

 

メンテナンスや故障防止を目的として風車を停止させた場合、発電効率が落ちることを心配する声もあります。
日本の気候は、山岳地帯では乱気流が発生しやすく、日本海側は発雷確率が高い、全国的に台風が発生しやすいなどといった特徴があります。欧州など海外と比較すると風力発電の設備利用率が低く、この指摘は一理あります。
しかし、風車を停止せずに故障してしまった場合の損害を考慮すると、停止させるのが結果として正解と言えるでしょう。

その理由として、風力発電の部品調達が挙げられます。日本の主要な風車メーカーは数年前に事業から撤退し、風力発電で使用している風車は海外製のものがほとんどです。

風車が故障した場合は海外から部品を輸入する必要があるため、調達に時間がかかります。また、日本で風力発電所が多い地域は北海道・青森・秋田などの豪雪地帯。冬季に風車が故障した場合、積雪の影響で春先まで工事ができないこともあります。これらの地域では、発電量は夏よりも冬の方が多いため、計画通りの発電ができなくなってしまいます。

風車が故障した場合、長期に渡るダウンタイムが発生してしまい、結果として発電コストが高くなってしまいます。それを防ぐため、発電事業者はあえて風車を停止させていると言えるでしょう。

一方、万が一の場合でも即時の対応が可能なように、風力発電施設からアクセスの良い現地に常駐スタッフを配備している国内事業者もいます。
また、メンテナンス技術の開発も進んでいます。例えば、CMS(Condition Monitoring System)は、データとAIを活用した異常検知・故障予知を行うモニタリングシステムで、オンライン監視によるメンテナンスの効率化を図っています。

風力発電所の稼働率向上でコスト最適化を

風力発電所の風車の点検(イメージ)出典:iStock風力発電所の風車の点検(イメージ)出典:iStock

 

風車が停止している理由は様々ですが、主にメンテナンスや、強風によるものだと分かりました。故障時との比較で重視されているメンテナンスですが、風力発電の設備利用率向上にはまだまだ課題が残っています。今日も、新しい技術開発によるメンテナンスの効率化や、保守人材の育成を含めた産業基盤全体の強化など、稼働率の向上とコスト最適化に向けた取り組みが検討されています。

 

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