風力発電の風車の寿命
更新日:2023年10月30日
風車の寿命イメージ(本文とは関係ありません) 出典:iStock
風力発電で使用している風車は、どのくらいの耐用年数があるのでしょうか。長期間使用する風車だからこそ重要なメンテナンスや、予防保全の考え方なども合わせてお伝えします。
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- エネルギーのまち能代 編集部
- 皆様は「洋上風力発電」をご存知でしょうか。秋田県能代(のしろ)市では、日本で初めての「大規模商業運転」が2022年から始まっています。
このサイトでは風力発電の話題はもちろん、再生可能エネルギーや環境問題についても幅広く解説しています!洋上風力発電で未来をひらく、能代の「いま」をご覧ください。
クイズ!風力発電の風車の寿命は何年?
空と風力発電所の風車 出典:iStock
~~ここで風力発電クイズ!~~
Q:風力発電で使われる風車の寿命は何年でしょうか?
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A:正解は「約20年」です!
風力発電は回転する機械であるため、風車などの疲労寿命によって決まります。国際規格で設計した風力発電の疲労寿命は、約20年といわれています。
大型の風力発電の場合も一般的には20年と考えられていますが、条件や機種によって30年程度のものもあります。
洋上風力発電の場合は、風車寿命を20年とした事業設計がされていますが、日本においては、税法上、資産の減価償却にかかる耐用年数が17年の適用とされているため、メンテナンスや機種の変更等を含めた事業計画は、17年で設定されることもあるようです。
風力発電の盛んな欧州では、同じ風力発電の風車を25~30年位まで運転をさせています。20年経過した風車は安全のため、あと何年運転させることが可能か、第三者機関による調査が義務付けられている国もあります。
「耐用年数」は、「法的耐用年数」とも呼ばれ、減価償却資産の計算をするための明確な基準となります。
「寿命」は、耐用年数と同じ意味として扱われることがありますが、「一般的にこれくらい」と言われている使用期限で、明確な基準がありません。
「耐用年数=寿命」は誤った認識なので、注意が必要です。
大型風力発電の設計寿命
大型風力発電の設計寿命 出典:iStock
大型風力発電の設計寿命は、主にコストと耐久性のバランスを図って決めていきます。実際は、管理状況や設置場所の風況によって大きく変わりますので、定期的な部品の交換など、しっかりしたメンテナンスを行うことにより、20年以上使えることもあるようです。ちなみに、基礎部分の設計寿命は約50年といわれています。
発電コストと風力発電所の風車寿命の関係
洋上風力発電 出典:iStock
風車の運転期間が長くなれば、発電設備の総発電電力量が増えます。
もちろん、設備の維持管理にかかる費用も増加しますが、トータルで考えると発電コストが抑えられ、安価な電力供給にもつながります。
発電コスト = (建設・撤去費 + 維持管理費) ÷ 発電電力量
風力発電の盛んな欧州では、同じ風力発電の風車を25~30年位まで運転をさせています。20年経過した風車は安全のため、あと何年運転させることが可能か、第三者機関による調査が義務付けられている国もあります。
現在、日本では再エネ海域利用法に基づく促進区域の占用期間は最大30年間と定められていますが、風車の寿命まで最大限稼働させることを考えると、建設期間も含めた占用期間を最大40年にする法改正が必要だとする、専門家の声もあります(『洋上風力の現状と技術課題』2022年5月 東京大学 石原孟)。
風車の寿命を延ばすために必要な運転・保守
風力発電所の風車のオンライン監視 出典:iStock
現在の風車の運転・保守の現場では、オンライン監視による予防メンテナンス(定期検査)が行われています。
メンテナンスをどのタイミングで行うか、という考え方を指す言葉として、「事後保全」・「予防保全」・「予知保全」という概念があります。従来道路などの社会インフラは、壊れてから修理を行う事後保全型メンテナンスが行われていました。
事後保全型メンテナンスでは、老朽化等で設備に故障が起きた場合、人的被害を含む大事故となってしまいます。そのため社会の基盤を支えるインフラに関して、事前にメンテナンスを行う、予防保全型のメンテナンスが推奨されるようになりました。
保全の種類 出典;編集部にて作成 「事後保全・予防保全・予知保全の考え方」
事前に計画されたサイクルに基づいてメンテナンスを行うことで、故障が発生する前に修理・部品交換することができ、施設のダウンタイムが発生しません。結果的に発電量の増加が見込めます。
風力発電所の風車の寿命まとめ
空から見た風力発電所 出典:iStock
風車の寿命は約20年。発電効率の向上を鑑みると、法的環境、技術面の課題も含め、風車をより長く使う環境整備が必要です。欧州のように、より長く安全に風車を使っていけるよう、今後の技術開発に期待です。