洋上風力発電における一般海域と港湾区域
更新日:2024年9月2日
洋上風力発電事業における一般海域と港湾区域とは?(イメージ)
出典:iStock
洋上風力発電所の事業対象となる海域は、一般海域、港湾区域の2つの海域があります。一般海域と港湾区域は、管理者や法律がそれぞれ異なります。今回の記事は、2つの海域の違いを解説します。
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- エネルギーのまち能代 編集部
- 皆様は「洋上風力発電」をご存知でしょうか。秋田県能代(のしろ)市では、日本で初めての「大規模商業運転」が2022年から始まっています。
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一般海域と港湾区域とは
洋上風力発電機が立ち並ぶ能代港の風景
出典:編集部にて撮影
洋上風力発電の導入を進めるため、現在日本では、一般海域と港湾区域の2つの場所で発電事業を進めています。
一般海域は、国土交通省が指定する海域で、港湾区域や漁港区域などの指定を受けていない海域を指します。一般海域は、日本の領海の大半を占めています。
港湾区域は、港湾法に基づき、港湾管理者が管理する地域です。主に都道府県や市町村が港湾管理者となっています。※1
※1 港湾区域のうち、東京港、横浜港、神戸港、新潟港、博多港などの国際戦略港湾や国際拠点港湾は国土交通省直轄の港務局が管理しています。都道府県が設置した港湾管理者はその他の重要港湾や地方港湾を、市町村が設置した港湾管理者は漁港や臨港工業地帯などを管理しています。
一般海域と港湾区域の違いは、以下の通りです。
洋上風力発電事業における一般海域と港湾区域の違い
出典:編集部にて作成
港湾区域での洋上風力発電の優位性
能代港湾区域での洋上風力発電所
出典:編集部にて撮影
海陸の境界という立地特性を活用できる港湾は、すでに様々な産業が数多く立地しており、送電線などの電気設備が充実しています。
港湾法に基づく港湾管理者が存在しており、関係者間の合意形成や占用許可に関する手続き等も行いやすく、海域の管理や利用調整の仕組みが整った区域であると言えます。
また、港湾インフラを活用することで、洋上風力発電施設の建設や維持管理がしやすいことも、港湾区域の優位性と言えます。
一般海域における洋上風力発電事業
港湾区域から離れた一般海域での風力発電所(イメージ)
出典:iStock
日本の領海の大半を占める一般海域は、広大な面積を有するため、港湾区域に比べて、風力発電設備の設置場所を確保しやすいというメリットがあります。風況や海況によって、より大規模な発電設備を設置することができ、発電効率の向上が期待できます。
一方で、一般海域への導入は、以下の2つの大きな課題があります。
(1)一般海域の長期占用を実現するためのルール整備が課題
(2)海運や漁業等で海域を利用している地域の先行利用者との調整が課題
そこで、一般海域での洋上風力発電事業導入は、再エネ海域利用法の施行や港湾法の改正などの取り組みにより、ルール整備や調整が進められており、現在も、洋上風力促進に向けた関連制度の設計や、系統枠の確保・系統負担の軽減に向けた取り組みが進められています。
日本の一般海域での洋上風力発電は、促進区域に指定された海域での実施が一般的です。再エネ海域利用法により指定される促進区域では、自然条件の他、漁業や航行への影響、維持管理ができる環境(必要な人員や物資が輸送できる範囲内に基地港湾があるか)等の条件が一定にそろっており、事業を効率的に進めやすいためです。
2024年1月時点、日本では一般海域での洋上風力発電事業は開始されておらず、現時点では、国内の前例はありません。
一般海域での運転は、銚子沖で2028年9月、同年12月に能代市・三種町・男鹿市沖、由利本荘市沖で2030年12月の運転開始が計画されています。
洋上風力発電事業における一般海域と港湾区域の違いまとめ
出典:編集部にて撮影
今回の記事では、一般海域と港湾区域は、管轄や適用される法律などが異なることをお伝えしましたが、現時点では、一般海域と港湾区域における洋上風力発電事業のメリット・デメリットを単純比較することは難しく、今後の洋上風力発電事業の発展や制度・ルールの整備によって、洋上風力発電事業における差異が見えてくるのではないでしょうか。