次世代エネルギー教育が育む、地元高校生の「能代愛」
更新日:2023年12月31日
出典:編集部にて撮影 「能代次世代エネルギースクールに参加した高校生、加賀谷さん」
能代市では、高校生向けに「能代次世代エネルギースクール」を開催しています。同スクールでは再エネ事業者による講義に加え、フィールドワーク等を行っており、毎年、再生可能エネルギーに興味を持った高校生が集まります。どんなきっかけでこのスクールに参加し、何を学んだのでしょうか。参加した高校生に、インタビューをしてみました。
- この記事でお話を聞いた方
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- 能代松陽高等学校 加賀谷 優那さん
- 2022年、2023年の能代次世代エネルギースクールに参加。好きな教科は古文。
- この記事の著者
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- エネルギーのまち能代 編集部
- 皆様は「洋上風力発電」をご存知でしょうか。秋田県能代(のしろ)市では、日本で初めての「大規模商業運転」が2022年から始まっています。
このサイトでは風力発電の話題はもちろん、再生可能エネルギーや環境問題についても幅広く解説しています!洋上風力発電で未来をひらく、能代の「いま」をご覧ください。
もくじ
能代市の若手人材育成を後押しする能代次世代エネルギースクール
左から2番目が加賀谷さん 出典:能代市
「エネルギーのまち」能代市は、エネルギー教育にも力を入れています。令和4年度より、地元の高校生を対象に「能代次世代エネルギースクール」を開催しています。
能代の代表的なエネルギーである洋上風力をはじめとした次世代エネルギーに触れられるこの講座では、様々な次世代エネルギーの活用方法や仕組みがわかるだけではなく、洋上風力発電に関わる事業者等の話を直接聞いたり、実際の機材に触れることができます。令和5年度は風力発電を活用した地域貢献策を考えるワークショップを開催するなど、体験型コンテンツが充実している講座です。
今回は、能代次世代エネルギースクールに参加した高校生、加賀谷優那さんが、スクールの様子や能代への想いを話してくれました。
CO2を出すのに再生可能エネルギー!ナゼ?がきっかけでした
加賀谷さんのノート 出典:編集部にて撮影
―能代次世代エネルギースクールには、どうして参加しようと思ったのですか?
「再生可能エネルギーを知ったのは、小学生のときです。校外学習でバイオマス発電所に行ったときに、その仕組みを聞いて、謎だなって思ったんです。
バイオマスは元々、木が生きているときに二酸化炭素を吸って酸素を出しているから、燃やしても二酸化炭素の排出は変わらないという理論じゃないですか。
あれが謎で、どうしてそんな考えになるのかなというのが面白くて。それから、なんとなく頭の中に「再生可能エネルギー」という言葉が残っていました。
高校生になった時に、能代次世代エネルギースクールのことを聞いて、参加してみようかなと思いました。」
バイオマス発電が再生可能エネルギーといわれる理由は、『大気中の二酸化炭素を増やすことなくエネルギーを生み出すことができる』からだといわれています。
バイオマス燃料を燃やして発生した二酸化炭素は、燃料となる動植物が生きていた時に大気から吸収したものだと考えられています。そのため、バイオマス燃料を燃やして発生した二酸化炭素は、地球温暖化の直接的な原因にならないという意見があります。
新たに二酸化炭素を生み出すことなくエネルギーを生成できる「ゼロカーボン」を実現しているため、再生可能エネルギーとして認識されています。
体験学習やワークショップがもりだくさん
フィールドワークの様子 出典:能代市
―能代次世代エネルギースクールでは、何をしましたか?
「座学だけではなくて、洋上風力発電の管理や点検をしている事務所を訪問し、どういう作業やお仕事をしているのか見せてもらったり、風力発電を活用した地域貢献策などを市長に提案したりしました。」
―市長に提案!?例えばどんな?
「色々出ました。能代港周辺に、風力発電のビジターセンターと観光拠点を兼ねた『海の駅』を整備して、風車グッズを販売したり、風力発電の電気を使って建物をライトアップする、とか。」
風力発電を活用した地域貢献策を市長に提案 出典:能代市
―面白い提案ですね。市長はどんな反応だった?
「ダメダメ、と言われる感じかなと思ったんですけど、うん、うん、という感じで聞いていただきました。個人的な感触だと、割とよかったのかなって思いました。」
―それはうれしいですね!自分たちのグループで発表したもので一番いいと思っているものは何でした?
「グループで話し合っている時に、風車からバンジージャンプをしてはどうか、という案がでました。ほかにも、風車がついた電車や車を走らせる企画も良かったです。現実的ではないかもしれないけど、面白いなって思っていました。
空を飛ぶ車や無人運転が実現するなら、もしかしたら、って。」
―洋上風力発電の管理事務所では、どんなことをしましたか?
「仕事で使用する道具の説明を受けたり、実際に触らせてもらったりしました。安全帯を装着したり、発電所がモニターで管理されている部屋を見せていただきました。
見学に伺った日は波が強くて、メンテナンス船が作業に出られなくて帰ってきたので、船の説明も聞くことができました。船長さんが普通の船との構造の違いを話してくれて、ラッキーでした笑。」
洋上風力発電は、ずっと続くと思っていたけど
能代港から見える風力発電 出典:編集部にて撮影
―今回参加して、印象に残ったことは何ですか?
「お話しいただいた中では、能代の洋上風力発電プロジェクトの話はやはり面白かったです。十何年も前から洋上風力に携わっている方のお話は驚くことが多くて、この事業は20年運転した後、風車は撤去するという話を聞いて『20年しかやらないんだ。ずっとやればいいのに』とも思いました。
国の制度で20年しかできないと聞いて、意外だなって。能代に住んでいて、物心ついたときから陸上には風車ってありましたし、もっと続くのかなと思っていました。」
「一番印象に残っているのは、地域共生策ですね。例えば、洋上風車が立っている場所の、水中部分には魚が集まるところができたりとか、(陸上風車では)地中と風車からの熱を使い、ビニールハウスを温めて野菜を育てる、みたいな考えがあるのを知り、すごいなって!」
「ただそこにあるだけ」だった風車が知りたい存在に
下から見上げた風車 出典:編集部にて撮影
―風車が身近に感じる瞬間はありますか?
「風車は私の家からは少し遠いのですが、ずっとそこにあり、生活の中で見かけることも多いです。これで私たちの電力を担っているんだなと思うと、身近に風車があり良いなって思います。」
―能代次世代エネルギースクールに参加して変わったことは?
「そうですね、『この風車はどのぐらい発電するのだろう』とか『1日の家での電気使用量はどのぐらいなのだろうか』とか、考えるようになりました。風車そのものの構造がどうなっているのかな?とか。例えば、ブレードの枚数が違うと発電量が変わるのはどうしてだろう、とか。
電力や風車に関するいろんなことが、少し気になるようになりました。
スクールに参加したことで、家や学校でも電気をこまめに切ることを意識したり……
今までは、ただそこにあるだけでしたが、もっと詳しく知りたくなりました。」
「やりたい」と言えば仲間がいる場所、能代
高校生が集まる「KOBUNDO」 出典:編集部にて撮影
―能代市には、どんなイメージがありますか。
「活動力がすごいと思います。洋上風力発電もそうですが、二酸化炭素を分離・回収し、地中などに貯留する技術(CCS)や、いろんなところに手が伸びているというか、自分たちが少しでもできると思ったことを取り組んでいるイメージがありました。これは、エネルギーに限りません。」
「例えばですが、この街の商店街、シャッターが下りているところが多くあります。商店街の入り口に、もともと鴻文堂という本屋さんがあり、そこが閉店した後の空き店舗に、高校生が集える場所を作ろうということになりました。
市役所の方や秋田公立美術大学の方が中心となり進めていたのですが、それこそ能代の高校生が集まり、どういう場所にしたいかをみんなで考えて作ってみて、そういうことも取り組んでいます。
みんなが住みやすい街にしてくれようとしているのだな、というのがよくわかるから、実際に住みやすいと思います。」
―具体的には、どんなところで感じますか?
「(人との距離が)近すぎるわけではないけど、遠くもなくて、割と提案できる距離の近さがあるので住みやすいかなと思います。行政もそうですし、近所付き合いとかでもそうですし、他人だけど身近なイメージがあります。だから、自分がこう動きたいと思ったときに呼びかけると仲間ができて、そういう環境はすごく住みやすいですね。」
―今後の目標を教えてください。
「能代を盛り上げたい気持ちが大きいので、これからも関わっていきたいと思っています。
みんなが住みやすい街を作り、そこに自分も関わっていられることは、すごく良い環境だと思います。
だからこそ、能代に人が戻ってきてほしいなと思います。活気がある街になってほしいと思うから、協力できるところがあれば、そこからやりたいなと思います。
日常で何か足りないなと思うところで『こうしたらいい』というアイデアを小さいことでも集めて、それを活かせるように、いろんなことを考えていきたいと思います。」