環境に関する意識の高まり

エネルギー自給率と再生可能エネルギーの可能性

更新日:2023年10月30日

エネルギー自給率と再生可能エネルギーの可能性

出典:iStock

 

日本は、先進国のなかでもエネルギー自給率が低いとされています。2019年度の自給率は12.1%。その要因は、日本国内の石油や石炭の産出量の少なさなど、エネルギー資源が乏しいことにありました。この記事では、日本のエネルギー自給率に関する問題点と、その解決策として注目されている再生可能エネルギーについて説明します。

この記事の著者
エネルギーのまち能代 編集部
皆様は「洋上風力発電」をご存知でしょうか。秋田県能代(のしろ)市では、日本で初めての「大規模商業運転」が2022年から始まっています。
このサイトでは風力発電の話題はもちろん、再生可能エネルギーや環境問題についても幅広く解説しています!洋上風力発電で未来をひらく、能代の「いま」をご覧ください。

日本のエネルギー自給率は、東日本震災前から4割減

日本のエネルギー自給率は低いイメージがありますよね。資源エネルギー庁の総合エネルギー統計の2019年度確報値によれば、日本のエネルギー自給率は12.1%です。
これは先進国の中でも特に低い水準です。
実は、東日本大震災が起きる以前、2010年度のエネルギー自給率は20.2%でした。東日本大震災震災に伴う福島原発での事故により、原子力発電は停止を余儀なくされました。これにより日本のエネルギー自給率は下落しています。

日本のエネルギー自給率が低い理由

エネルギー供給構成の推移 出典:資源エネルギー庁エネルギー供給構成の推移 出典:資源エネルギー庁

 

諸外国に比べて日本のエネルギー自給率が低い理由は、ご存知の通りエネルギー資源の乏しさにあります。日本はエネルギー資源となる石油・石炭・天然ガス(LNG)などの化石燃料の大部分を海外からの輸入に頼っています。
特に東日本大震災以降、化石燃料への依存度は高まっており、2019年度は84.8%となっています。

エネルギー自給率が低いことに起因する課題

化石燃料に依存しエネルギー自給率の低い日本 出典:iStock化石燃料に依存しエネルギー自給率の低い日本 出典:iStock

 

国内エネルギー自給率が低いことで発生する最も大きな問題は、国際情勢の変化によって国内のエネルギー供給が不安定になる可能性があることです。日本の主力エネルギーを化石燃料に依存する限り、国際情勢が悪化すると、安定的にエネルギーを確保できないために国内のエネルギー供給が不安定になります。実際にウクライナ危機では、世界中のエネルギー情勢は混迷を深めました。

エネルギー供給網が不安定な状態では、インフラだけでなく、製造・流通などの多岐にわたる産業が停止します。エネルギーの安定性の確保は重要な課題です。

エネルギー自給率の向上のために日本が目指すエネルギーミックス

2030年エネルギーミックスでは火力発電の割合が大幅減 出典:資源エネルギー庁2030年エネルギーミックスでは火力発電の割合が大幅減 出典:資源エネルギー庁

 

エネルギー自給率の向上のためには、海外の化石燃料に頼らず、再生可能エネルギーを含めた様々な電源を多角的に使用することが有効とされています。
政府は、「2030年エネルギーミックス」という目標を設定し、国内のエネルギー自給率の向上を目指しています。2019年度には、全体の76%だった化石燃料による火力発電の割合を、2030年度には全体の41%に抑える事を目標としています。
この火力発電の割合を41%に抑える目標は、2015年に策定された「長期エネルギー需給見通し」で示された56%よりも、さらに高い数値目標であり、今後よりいっそうの取り組みが必要とされます。

2030年エネルギーミックスの中で割合を増やしているのは原子力発電と再生可能エネルギーです。
原子力発電はCO₂を排出しない発電方法ではあるものの、事故の危険性や使用済み燃料の処理問題があり、原子力発電所の再稼働を巡って意見が対立しています。

そこで注目されているのは、化石燃料や原子力を使わない、再生可能エネルギーです。日本の再生可能エネルギーは風力・水力・地熱などの自然の力を使った自然エネルギーや有機物を利用したバイオマスエネルギーなど、輸入するエネルギー資源に頼らずにエネルギーを生み出すことが出来ます。この再生可能エネルギーのエネルギーミックスの割合を増やすことで、エネルギー自給率の向上とエネルギー安定性に繋げていく計画です。

再生可能エネルギーの海外の動向は

再生可能エネルギーの発電コストは年々低減化している 出典:資源エネルギー庁

再生可能エネルギーの発電コストは年々低減化している 出典:資源エネルギー庁

 

発電コストが高いと言われる再生可能エネルギーですが、技術の進歩に伴い、発電コストは年々、低減化しています。世界的に見ると、発電コストの低減が、再生可能エネルギーの拡大につながるという好循環が生まれていて、2015年には、世界全体の既存発電設備容量で、水力発電を含む再エネによる発電が石炭火力発電を超えました。

欧州における再生エネルギーの中心は風力発電です。デンマークやオランダでは、洋上風力発電の設置に必要な環境アセスメントや地元との調整を政府が主導することによって、風力発電事業者のリスクを低減させる取り組みを進めています。

エネルギー自給率の向上と再生可能エネルギーの拡大

自然豊かな日本は再生可能エネルギーの資源の宝庫 出典:iStock

自然豊かな日本は再生可能エネルギーの資源の宝庫 出典:iStock

 

再生可能エネルギーの導入には、各世帯が「再エネ賦課金」という形で支払っている、電力の固定価格買取制度(FIT)の費用負担問題もあるものの、日本のエネルギー自給率の向上やエネルギー安定化を考えれば、日本国内でのエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合は増加していくでしょう。また、再生可能エネルギーでの発電は、将来的にはコストダウンが進み、他の発電方法で発電された電力と比較しても、コスト優位性のあるエネルギーとなる可能性があります。

山や川が多く海に囲まれた日本は自然エネルギー資源が豊かとも言えます。日本のエネルギー自給率が100%近くなる日も来るかもしれません。

新着記事

ページトップへもどる