次世代エネルギー

自然エネルギーの発電効率比較|風力発電と太陽光発電の効率・特徴を徹底解説

更新日:2023年12月17日

自然エネルギーの発電効率を検証してみる(写真はイメージです) 出典:iStock

自然エネルギーの発電効率を比較してみる(写真はイメージです) 出典:iStock

 

再生可能エネルギーの普及が加速する中、発電効率の高さは導入判断の重要な指標です。

本記事では、風力発電を中心に、太陽光やその他の自然エネルギーとの発電効率を比較し、その特性や導入メリットをわかりやすく解説します。

最新の研究データや設備利用率の傾向も交え、陸上型と洋上型の風力発電の違いや、地域・季節による変動要因についても紹介します。これから再エネ導入を検討する方や、効率向上の最新技術に関心のある方に向けた必読ガイドです。

この記事の著者
エネルギーのまち能代 編集部
皆様は「洋上風力発電」をご存知でしょうか。秋田県能代(のしろ)市では、日本で初めての「大規模商業運転」が2022年から始まっています。
このサイトでは風力発電の話題はもちろん、再生可能エネルギーや環境問題についても幅広く解説しています!洋上風力発電で未来をひらく、能代の「いま」をご覧ください。

発電効率とは何か

エネルギー変換の過程で必ずロスが生じる(写真はイメージです) 出典:iStock

エネルギー変換の過程で必ずロスが生じる(写真はイメージです) 出典:iStock

 

再生可能エネルギーを電力として利用するには、太陽光パネルや風車など、自然エネルギーを電気エネルギーに変換する設備が必要です。同じ設備コストの施設で発電が行われた場合、発電効率が良いエネルギーほど理想的であり、効率的なエネルギー源ということになります。

発電効率とは「投入したエネルギーが、どれだけ電気に変換されたかの割合」を指します。例えば投入したエネルギーを全て電気に変換できれば発電効率は100%です。

エネルギーが形態を変える際には、さまざまな種類へのエネルギーに分散されてしまうため、理論上100%の発電効率を達成することは不可能と考えられており、電子機器や発電設備でも、電気抵抗によってどうしてもロスが生じてしまいます。

例えば、PCやスマートフォンを利用しすぎると本体が熱くなることがないでしょうか。これらの機器を長時間使用することにより、電気抵抗で熱エネルギーが発生している状態です。

結果として本体が熱をもってしまいますが、PCやスマートフォン等の危機を熱くしたいわけではありません。エネルギーのロスがおきる、というのはこういう状態をさします。

太陽光発電の場合で言えば、パネルに当たった太陽光が全ての電気に変換されるわけではありません。太陽光には、紫外線、赤外線、可視光線など、さまざまな性質の光が含まれており、その全てを変換することはできません。発電の際にも熱エネルギー等が出てロスがでてしまいます。このような理由から、現在の技術では発電効率を100%とすることは不可能とされています。

 

自然エネルギーの発電効率の比較

自然エネルギーの発電効率を比較してみる(写真はイメージです) 出典:iStock

自然エネルギーの発電効率を比較してみる(写真はイメージです) 出典:iStock

 

それでは自然エネルギーの発電効率をその種類別に比較してみましょう。

 

自然エネルギーの発電効率:太陽光発電

太陽光発電の発電効率は20%程度(写真はイメージです)  出典:iStock

太陽光発電の発電効率は20%程度(写真はイメージです)  出典:iStock

 

太陽電池における発電効率は、「太陽の光エネルギーをどのぐらい電気に変換したかを示す割合」を指します。季節や温度、パネルの角度や日差しの強さなど、複数のパラメータにより、出力も発電効率も変化していきます。

ソーラーパネルのカタログで、「変換効率●●%」という表記を目にしますが、これは、世界共通の一定の条件のもとで測定した発電効率が採用されています。

現在、一般的に住宅用・産業用として販売されている太陽電池は「シリコン系太陽電池」です。このシリコン系太陽電池の発電効率は、気候条件や地域によって違いはありますが、約20%といわれています。

人工衛星で使用される太陽光発電システムに「化合物太陽電池」があります。「結晶シリコン太陽電池」は単層で光を電気へ変換しますが、多接合型は複数層あることで電気に変換可能な光の波長領域が広いため、発電効率を約40%まで上げることができます。コストが高く、一般的に普及するのはまだ先の話ですが、今後も太陽光発電の技術開発は進み、同時に住宅用パネルの発電効率もさらに向上していくと考えられています。

 

自然エネルギーの発電効率:水力発電

水力発電の発電効率は80%程度(写真はイメージです) 出典:iStock

水力発電の発電効率は80%程度(写真はイメージです) 出典:iStock

 

水力発電の発電効率は約80%と、自然エネルギーの中でも非常に高いエネルギー変換効率を誇ります。発電に必要な燃料を海外から輸入している火力発電や原子力発電と違い、水力発電の原料となるのは無料の水であり、水資源が豊富な日本に適した発電方法です。また、国内の山々を流れる推計には高低差が大きいものが多く、水の位置エネルギーを電力に変換する水力発電に向いている地形であるともいえます。

一方で、大規模水力発電はすでに多くの場所で開発が進められ、新たにダムを建設する場所を探すことは容易ではありません。ダムの建設に巨額の資金と長い時間を必要とするといったデメリットもあります。

今後は、川の流水を利用したり、比較的小さな用水路や上下水道を利用したりする、3万kW未満の中小水力発電が増えていくと予想されます。すでに開発済みの大規模水力に比べて、開発の余地が多く残されています。

 

自然エネルギーの発電効率:風力発電

風力発電の発電効率は30%程度(写真はイメージです) 出典:iStock

風力発電の発電効率は30%程度(写真はイメージです) 出典:iStock

 

効率的に電気を変換できる風力発電は、日中しか発電できない太陽光発電と異なり、一定の風速以上の風が吹いていれば、昼夜を問わず発電することができます。一般的な風力発電の発電効率は、30%~40%程度といわれていますが、1920年にドイツのアルバート・ベッツによって提唱された運動量理論では、最大効率が59.3%であると計算されています。

デンマークでは発電量の半分が風力発電で占められ、中国でも大規模な導入が進んでいます。また、欧州では、洋上風力発電で大規模発電を行うことで発電コストの低減化に成功しています。

風力発電の発電効率を高めるための技術は研究開発も進んでおり、素材や工法などの進歩により、風力発電の高効率化が進むと考えられています。また、発電地が限られる水力発電や地熱発電と比較すると、洋上にも適地が広がる日本では、陸上のように敷地面積や道路の広さといった制約を受けず、大規模なウィンドファームの導入が進むことも期待されています。

 

自然エネルギーの発電効率:地熱発電

地熱発電の発電効率は10%程度(写真はイメージです) 出典:iStock

地熱発電の発電効率は10%程度(写真はイメージです) 出典:iStock

 

雨水や河川水が地中深くまで浸透した地下水の一部は、マグマで熱せられ、難透水層の下に地熱貯留層を作ります。そこから蒸気や熱水を汲み上げて、蒸気タービンを回して発電させるのが地熱発電です。火山の多い日本では、昔から地熱エネルギーを発電の他、入浴や暖房、食品加工、木材乾燥、養殖など、さまざまなものに活用してきました。発電効率は約10%~20%とあまり高くありませんが、地球内部のマグマを利用するため、エネルギー源が枯渇する心配がなく、季節や時間帯を問わずに、安定した発電量が確保できます。

デメリットは、地熱開発には初期調査、探査、環境影響評価、建設工事を経て、運転開始までに膨大なコストと期間が必要となることです。また、地熱発電の適地が自然公園や温泉観光地に隣接する場合が多いため、周辺地域や住民との合意形成が難しいことも課題となっています。

 

風力発電の発電効率に関する疑問

Q: 風力発電の設備利用率はどの程度ですか?
A: 一般に25〜45%で、世界平均は約35〜44%です(立地や機種による差あり)。


Q: 太陽光と比べて効率は高いですか?
A: 太陽光の容量係数は約15〜20%で、風力は25〜45%と高い傾向があります。


Q: 洋上風力は陸上より効率が高いですか?
A: 欧州平均で陸上約24%、洋上約38〜40%と高い傾向があります。


Q: 季節による発電量の変動は?
A: 冬季は風が強く、年間平均より高い発電量が得られる傾向があります(特に東北)。


Q: 最新技術で効率は向上していますか?
A: ブレード設計や制御技術の進化により、実効効率は約45〜50%まで向上しています。

 

自然エネルギー発電効率まとめ

発電方式別にみた発電効率 出典:新エネルギー大辞典より編集部作成

 

発電方式別にみた発電効率 出典:新エネルギー大辞典より編集部作成

 

発電効率はエネルギーによってさまざまですが、「発電効率の高さ」と「発電量の大きさ」は必ずしもイコールではありません。発電効率が低くても、元のエネルギー量が大きければ大規模な発電が可能となり、その逆の場合もあり得るからです。

また、自然エネルギーは地域特有の自然現象をエネルギーに変えて発電を行うことから、それぞれの特性や課題が存在します。環境に配慮しつつ、将来にわたって安定的かつ経済的な電力供給を国内で実現するためにも、さまざまな発電方式を組み合わせることで、バランスの取れたエネルギーミックスを実現していくことが重要視されています。

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