大規模洋上風力発電所を実現する第2ラウンド公募結果は3事業者。第1ラウンドとの違いも解説
更新日:2023年12月18日
空から見下ろした洋上風力発電所(写真はイメージ) 出典:iStock
一般海域での洋上風力発電事業は、再エネ海域利用法に基づく促進区域等で進められます。「能代市、三種町及び男鹿市沖」を含む第1ラウンドに続いて、「八峰町及び能代市沖」を含む4つの促進区域を対象とした第2ラウンドは、2023年6月30日に公募が締め切られ、12 月13日に選定事業者が公表されました。本記事では、第1ラウンドとの違いを明らかにしながら、第2ラウンドの状況を解説していきます。
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- エネルギーのまち能代 編集部
- 皆様は「洋上風力発電」をご存知でしょうか。秋田県能代(のしろ)市では、日本で初めての「大規模商業運転」が2022年から始まっています。
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もくじ
洋上風力発電の第1ラウンド、第2ラウンドとは何か
戦いのリング(写真はイメージ) 出典:iStock
新聞やメディアでよく目にする「第1ラウンド」「第2ラウンド」とは、何を指しているのでしょうか。第1ラウンド、第2ラウンドはともに、『海洋再生可能エネルギー発電設備に係る海域の利用の促進に関する法律(再エネ海域利用法)』による促進区域において公募の実施を指す呼称です。2021年に実施した第1回目の公募は第1ラウンド、2023年6月30日に入札を締め切った第2回目の公募は第2ラウンドと呼ばれています。
洋上風力発電事業を実施するために海域を占用する場合、海域の区分により適用される法律が異なります。一般海域は、原則再エネ海域利用法が適用されており、秋田港・能代港で稼働しているような港湾区域では、港湾法などの法律によって、海域の占用手続きが定められています。
一般海域は、港湾区域や漁港区域などの指定を受けていない区域を指します。
これまで、一般海域は、海域利用のための統一的なルールが定められていませんでした。再生可能エネルギーの推進を目指す日本では、一般海域での洋上風力発電事業の実施にあたって、2018年、長期占用などを可能とする法律『海洋再生可能エネルギー発電の設備に係る海域の利用の促進に関する法律(再エネ海域利用法)』を施行しました。
再エネ海域利用法は、漁業者など海域の先行利用者との調整を図ったうえで、洋上風力発電事業を推進するための促進区域を指定し、公募によって選定した発電事業者に対して、最大30年間の海域の占有を認めています。
能代市沖を含む海域については、「能代市、三種町及び男鹿市沖」と「八峰町及び能代市沖」の2区域が、それぞれ促進区域として指定されています。
これらの区域を地図上に示すと、以下のエリアです。他にも秋田県沖では、「由利本荘市沖(北側・南側)」と、「男鹿市、潟上市及び秋田市沖」も促進区域になっています。
促進区域・有望区域等の指定・整理状況(2023年12月20日時点)
出典:経済産業省・国土交通省の公表資料より編集部作成
洋上風力発電事業 第1ラウンドと第2ラウンドのルールの違い
洋上風力発電事業の本格化(写真はイメージ) 出典:iStock
第2ラウンドで洋上風力発電の事業者を公募しているのは、「八峰町及び能代市沖」「男鹿市、潟上市及び秋田市沖」「新潟県村上市及び胎内市沖」「長崎県西海市江島沖」の計4海域です。一般海域における2回目の公募となる第2ラウンドは、事業者選定の評価基準が第1ラウンドと異なることでも話題を集めました。
公募選定では、「価格点」という定量評価と、「事業実現性に関する得点」という定性評価がそれぞれ120点、合計240点満点で決められます。価格と事業実現性が1:1で評価される仕組みそのものは、第1ラウンドと変わりませんが、第2ラウンドでは、事業実現性の評価を中心に、様々な変更がありました。
第2ラウンドで変更された公募ルールのうち、事業者が提出する公募占用計画に関係する主な項目としては、(1)落札制限の導入、(2)事業実現性評価の点数補正、(3)迅速性評価の導入、(4)事業実現性評価の配点の変更が挙げられます。
(1)落札制度の導入
2022年10月27日に公開された占用公募制度運用指針の改定版を要約すると、できるだけ多くの事業者への参入機会を与えるため、1回の公募で複数区域の事業者選定をする場合には、公募参加事業者一者あたりの落札数の制限を実施することとなりました。
第2ラウンドの4海域で、同じ事業者が複数の海域の評価点で1位を取った場合、2位の事業者との点差が大きい海域から順に落札されます。落札分が1GW以上となった場合は、 残る区域が落札できなくなります。
秋田県の2海域は、いずれも能代港・秋田港を基地港湾として利用することが想定されるため、選定ルールや落札制限のルールが複雑になります。2つの海域の評点1位の港湾の利用時期が重ならなければ問題ありませんが、今回の選定のように重複が生じた場合は、事業者による公募占用計画の再提出を含む、評価の調整が行われます。
(2)事業実現性評価の点数補正
第1ラウンドでは、事業実現性評価の点数は、120点満点のうち、各評価項目における点数の合計点がそのまま評価点とされていました。第2ラウンドでは、促進区域ごとに最高の評価点を受けた公募参加者の評価点を満点となるように調整します。
下記の表は、第1ラウンドの結果に第2ラウンドの点数補正を適用したものです。例えば、能代、三種町及び男鹿市沖の最高得点は事業実現性が三菱Gの88点ですが、第2ラウンドの場合は、120点として扱い、次点以降の点数も比率で決めていきます。
出典:経済産業省・国土交通省の公表資料より編集部作成
(3)迅速性評価の導入
各区域にかかる迅速性評価 出典:経済産業省・国土交通省
第2ラウンドにおいて、迅速性で高い評価を得ることは非常に重要とされています。迅速性の評価は、改訂版の運用指針では、以下の4つのポイントが定められています。
1.運転開始時期に関する絶対基準が設定されていること
運転開始時期を決めているかどうか。第2ラウンドでは、2031年(令和13年)4月以降の運転開始となる計画は、基礎となる評価点は0点となるとされています。
2.港湾利用期間等を踏まえた最速の運転開始時期が考慮されること
最速の運転開始時期は、基準評価点が満点もらえる基準時点のことで、予め海域ごとに設定されています。秋田県は2区域共に2027年(令和9年)6月末までに運転開始をすると、満点となる20点の評価点をもらえることになります。
3.段階評価がされること
段階評価とは、2.の最高評価となる時点から1.の期限の間で段階的に評点する仕組みです。第2ラウンドでは、最高得点となる20点から1年経過ごとに点数が下がる方法が示されました。
4.迅速性の評価点は、運転開始時期に応じた点数に事業計画の基盤面・実行面の評価点の比率を乗じた値とすること
迅速性の評価は、1~3に挙げた基礎評価点だけではなく、迅速性とは別の「事業計画の基盤面」と「事業計画の実行面」という2つの項目の評価に対する比率を乗じて、重みづけがされます。これらの項目は、各20点の計40点が設定されています。
例えば、基礎評価点を16点獲得している事業者が、事業計画の基盤面、実行面で40点中30点を獲得した場合、基礎評価点16点×30/40点(0.75)となり、迅速性の評価点は12点となります。
(4)事業実現性評価の配点変更
事業実施能力の項目と配点の再構成 出典:経済産業省・国土交通省
第1ラウンドにおける事業実現性評価は、「事業実施能力」(80点)と「地域との調整・地域経済等への波及効果」(40点)の120点満点となっており、このうち、「事業実施能力」については、「事業実施実績」(30点)、「事業計画の実現性」(20点)、「リスク特定・分析」(15点)、「電力の安定供給・将来的な価格低減、最先端技術の導入」(15点)により構成されていました。
第2ラウンドでもこの大枠は変わりませんが、発電設備の早期運転開始をより重視し、「事業計画の実現性」から「事業の迅速性」の要素を切り出し、独立した項目として20点を配分しています。その他の要素についても、各項目ごとに「重みづけ」をした配点を設定したほか、「電力の安定供給」に関しては、国内外における重要性の高まりから、配点を20点に拡大するなど、評価項目と配点の見直しが行われています。
洋上風力発電事業 第2ラウンドの結果は
洋上風力発電所(写真はイメージ) 出典:iStock
2023年12月13日、経済産業省と国土交通省は第2ラウンドの結果を以下のとおり発表しました。
(1)秋田県男鹿市、潟上市及び秋田市沖
事業者(コンソーシアム)名:男鹿・潟上・秋田Offshore Green Energyコンソーシアム
構成員:JERA、電源開発、伊藤忠商事、東北電力
発電設備出力:31.5万kW(着床式/1.5万kW×21基/Vestas製)
運転開始時期:2028年6月(予定)
(2)新潟県村上市及び胎内市沖
事業者(コンソーシアム)名:村上胎内洋上風力コンソーシアム
構成員:三井物産、RWE Offshore Wind Japan、大阪ガス
発電設備出力:68.4万kW(着床式/1.8万kW×38基/GE製)
運転開始時期:2029年6月(予定)
(3)長崎県西海市江島沖
事業者(コンソーシアム)名:みらいえのしまコンソーシアム
構成員:住友商事、東京電力リニューアブルパワー
発電設備出力:42.0万kW(着床式/1.5万kW×28基/Vestas製)
運転開始時期:2029年8月(予定)
先述のとおり、「秋田県八峰町及び能代市沖」については、最も評価の高かった事業者と、「秋田県男鹿市、潟上市及び秋田市沖」の選定事業者の計画における港湾の利用期間に重複が生じたため、計画を再提出する予定となっています。
今後、第三者委員会における評価等を経て、2024年3月に改めて選定結果が公表される予定となっています。